R1.06
7/20

7石狩川頭首工の魚類調査 ゲートで川の水をせき止めて水位を上げ、水を農業用水路へ流す石狩川頭首工には、魚が遡上する際に、支障となるゲートなどを回避する施設として、二つの魚の通り道(魚ぎょ道どう)が設けられています。 一つは、ゲートで水をせき止めた時でも、魚の通り道を確保する「閘こうもんしき門式魚道」です。もう一つは、魚が泳ぐ速度に合わせて、いろいろな種類の魚の遡上を可能にする「3連式魚道」です。 石狩川頭首工を管理する札幌開発建設部篠津地域農業施設管理支所は、平成28年の魚道の魚類調査で、しばらくの間確認されていなかったサケの遡上を確認することができました。 須部都川への遡上に明るい兆しが見え始めたのは、このときからです。 また、石狩川頭首工では、平成29年から毎年、魚類調査の見学会を開き、月形小学校の児童が頭首工の機能や石狩川を遡上する魚の生態系について、実際に施設を目で見て、魚に触れ親しみながら、自然の大切さなどを学んでいます。須部都川の魚類生息調査 平成20年からサケの稚魚を放流している須部都川では、札幌開発建設部岩見沢河川事務所職員による魚類調査の結果、平成29年11月、待ちに待ったサケの遡上・産卵行動が確認されました しかし、このとき同時に、毎年サケの稚魚を放流していた場所(放流会会場)の下流に流木が堆積している魚道や新たに魚道が必要とされる箇所が確認され、サケの遡上に支障をきたしていることが判明、早急な対応が望まれました。須部都川の流木撤去作業 平成30年6月、須部都川に設置されている魚道3カ所のうち2カ所で、たくさんの流木が堆積し、水が通っていない場所の流木撤去作業が行われました。 この作業は、国の機関である岩見沢河川事務所、北海道の機関である札幌建設管理部岩見沢出張所、月形町役場、そして、河川愛護団体である「花の里つきがたの水と緑を愛する会」が実施し、官民一体の協働作業となりました。 重機が入れず人力での撤去作業となった場所では、直径30㌢ほどもある流木もあり、2時間以上かけての過酷な作業となりましたが、無事、魚道の通水を確保することができました。稚魚の放流から考えること 以前は、月形町にも多くのサケが遡上していたことは、想像に難くありません。ですが、高度経済成長期の中でまちが発展、農地が拡大するなど、水資源を必要とする時代の中で開発が行われ、河川の水質の悪化を招きました。また、取水するためのダムの建設や、水害・土砂災害から生活を守るための治水を目的とした河川改修などが行われ、サケが遡上できない環境が私たちの生活の発展とともに作られていきました。 平成29年に須部都川で3ペア(計6尾)のサケの遡上・産卵行動が確認されたことは、サケの稚魚の放流という1つの行動だけで生まれた結果ではありません。 稚魚は、放流された須部都川から石狩川へ、そして石狩湾から日本海へ出て大海原を駆け巡り、再び石狩川から、須部都川へと戻って来ます。 遙かなる旅路の全ての環境がサケにとって住みやすいものでなくては、サケは放流された川に戻って来ることができないのです。 以前のようにサケがたくさん戻って来る川にするためには、私たちが自然の環境を整えなくてはなりません。そして、それは私たち自身のためでもあるのです。 サケの稚魚の放流や遡上が、私たちの生活で欠かせない水や自然を守ることの大切さを考えるきっかけになるのではないでしょうか。川を守り、自然を守る過去には、たくさんのサケが遡そじょう上したであろう須部都川。在りし日の川の姿を取り戻そうと、私たちが知らないところで懸命に活動している人々がいます。▲魚道調査を見学する児童たち▲過酷な流木撤去作業▲H29須部都川にサケが遡上▶石狩川頭首工魚道の魚類調査特集 サケが戻る日

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です